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No Titile (小牧と堂上 from '図書館戦争')


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「良かったねぇ」
しみじみと頷きながら、ベッドの堂上に小牧がお茶のカップを渡す。それを一口啜り、堂上は精一杯の渋顔を作って答えた。
「しつこいぞ」
小牧は意に介さない。「このネタ当分使えますよ」という柴崎の言葉に内心深く頷いた事を、堂上は知らない。
「『王子様』の正体も知ってたんだねぇ、笠原さん。それであの時あんなに泣いてたワケか」
「泣きたかったのはこっちだ」
「でも『今の堂上』が好きだって言ってくれたんでしょ? 最高の殺し文句じゃない」
それはそうだが、と堂上は口ごもった。あの場面で叫びそうになるのを自制したことは褒めて貰いたい。
「というかどうしてお前がそこまで知っている」
「柴崎さんに決まってるでしょ。ま、あれだけ幸せオーラ出してる笠原さん見て何も気付かないのは、手塚くらいのもんだと思うけど」
転院してから郁がせっせと堂上を見舞っていることは、もう周知の事実だ。二人の仲が進展したらしいことも。柴崎があれこれ聞き出し、じわりじわりと話は広まっている。──ということを、本人たちだけはまだ知らない。
「…ところでさ、決めたんならさっさとした方がいいよ?」
堂上は「は?」と同期を見上げた。
「何を?」
「虫避け。印つけるなり、周りに宣言するなり」
「……ちょっと待てお前」
「笠原さんって時々驚くくらい可愛いからねー。自覚してない分、余計に。どこで誰にかっさらわれるか分からないよ」
「ありえん」
「うわ、即答。真っ先に落とされといて良く言うよ」
「万一浚われても、並の男の手に負える女じゃない、って意味だ」
小牧は一瞬目を見張り、
「………自覚してないのは堂上もだってこと忘れてたよ」
やがて身体をよじって笑い始めた。

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もういつ書いたんだか覚えていませんがたぶん図書館危機直後くらいに幸せいっぱいで書いたんだと思う。
このコンビはとても好き。
by generalx | 2009-05-21 20:12 | 言の葉 | Comments(0)