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るるたんの騎士(ナイト) 最終話

<前回までのあらすじ>
「シュナイゼル殿下、貴方にデュエルを申し込む」
ついに始まる、シュナイゼルとの正面対決。
カノンの駆るダモクレスとフレイア弾頭の威力に、容易に近づけないスザクは次第に劣勢に追い込まれていく。


***

『…ひとつだけ約束しろ』
ランスロットのコクピットで、スザクは額を伝う汗をそのままに操縦桿を握りなおした。
思い出していたのは、デュエル直前のルルーシュの言葉だ。
差し出した手を、ルルーシュは取らなかった。ただ縋るようにスザクにしがみつき、
『…お前に、そばにいてほしい。これからもずっと』
一言ひとことを、呟くように告げるルルーシュにスザクは答えた。
『僕を信じて』
信じてくれたら、僕は絶対それに応えるから。


「負けを認めたらどうだい、ルルーシュ」
これは勝負にならないね、とデュエルを映したモニターを眺めながらシュナイゼルは言った。
「このままだと、ランスロットごと消し飛んでしまうよ」
「いいえ」
ルルーシュは昂然と顔を上げたまま答えた。視線は、モニターから一瞬も外れない。
「スザクは、俺の騎士です。スザクは負けません。約束しましたから」
その瞳は、もう揺るがない。
戦うことを決めた。そのための剣になろうとスザクは言った。ルルーシュを守る盾にもなると。
スザクと二人で、できないことなんてない。
「貴方の騎士に教わったのですよ、主に信じてもらうことが騎士の力になると。兄上は、ご自分の騎士を信じておられない。それが兄上の限界です」
新たなフレイアの爆発が起こり、ぱっと光って消えた。
「……相変わらず強情だ」
すっと立ち上がったシュナイゼルが、腰に帯びた細剣を閃かせた。祭祀用でも、人を傷つけるには十分だ。さすがに息を呑んだが、ルルーシュに逃げ場はない。
「君にも罰を受けてもらおう。私を侮辱した罪は重いということが、よく分かるだろう」
シュナイゼルが腕を振り上げる。そしてルルーシュが衝撃に備えた瞬間、

「──ルルーシュ!」

その映像をランスロットで捉えていたスザクは、ランスロットから飛び出した。
刃が腕を滑るようになぞり、鮮血が刃を伝って滴り落ちた。パイロットスーツのおかげで、深手ではないが、痛みと熱さが全身を駆け抜ける。
「ルルーシュは、傷つけさせない」
スザクはシュナイゼルを見上げて言った。
「僕の主を──大切な友人を、これ以上は」
ルルーシュを庇うため放り出したことで、ダモクレスに破壊されたランスロットではアラームが不協和音を奏でている。だが、ルルーシュが無事ならばそれでいい。
ルルーシュは血の気のひいた顔で、だがそれでも「大丈夫か」とは問わなかった。今はデュエルの最中で、それはまだ終わっていない。
「勝て、スザク」
ああ、叶えよう。騎士に絶対の、主の命令だ。
「──イエス、ユア・ハイネス!」


「…なに!?」
カノンは戦いた。
ナイトメアを放り出すなんて馬鹿なことをと、さきほど存分に攻撃をさせてもらった。
ランスロットのエナジーフィラーはほぼ限界、満足に使える獲物は剣のみ。その状態で、ランスロットはダモクレスに突っ込んでくる。
「…っ」
衝撃が操縦桿を伝ってくる。ランスロットの剣に、勢いに、気迫に、押されていく。
「…まさかこんな」
カノンがコクピットで呟く。推進システムが異常だと、システムエマージェンシーが鳴り響く。
これが違いだというの。執着する者と、しない者の──。
『聞こえているかい、カノン』
シュナイゼルからの通信が入った。
『…もういいよ、カノン』
カノンは虚をつかれたように一瞬目を見張り、やがてそっと目を閉じた。
『私の負けだ』
ああ、やっと解放されたのだ、あの方は。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという存在から。

「──それまで!」
ジェレミアの終了宣言が会場に響き渡った。
「勝者、枢木!」
わっと、ルルーシュの周りで歓声があがった。
喜んでくれている仲間たちの押しのけるように、ルルーシュは一目散に走った。
騎士に、ランスロットに向かって。

「約束、守ったよ」
「…ああ」
そばにいること。
命令ではない。それはもう忠義ではないかもしれない。
でも、それよりももっとずっと大事なことかもしれない。
「……ありがとう」
ルルーシュは泣きそうな顔で、スザクに抱きついた。

***

ルルーシュのための披露式典会場では、大勢の視線がルルーシュに集まっている。
「私、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、幼少の頃より第17位の皇位継承者として…」
式典で話せと言われた挨拶は押し付けられたもので、覚えることは造作もなかったが、誰が書いたものか、ほとんどでたらめだった。幼少時に市井に下りて、平民として育ったことは表に出さない方針らしい。
面倒くさい、とルルーシュは式典直前までぼやいていた。
(笑顔の安売りなんてやってられないぞ)
(だろうね。心残りがあればなおさら)
(…スザク)
(僕は君の騎士なんだよ?望みとか叶えるのが本来の使命なんだけど?)

「ブリタニア皇族として、恥じぬよう努めて参りました」
そこで、ルルーシュは口をつぐんだ。
くれぐれも勝手なことは言わないようにと念を押された。むっとしながらそれに頷いた。こういう場では、時に形式が重要だということもわかっている。
──でも。
会場がざわつきだしても、ルルーシュは動かなかった。

(留学!?)
ロロが正式な騎士になるため本国に渡るという知らせを、ルルーシュは昨日受けた。
しかも出発日は、ルルーシュの、正式な皇位継承者としての披露式典の日。つまり、今日だ。
「なんで言わなかったんだ!」
「だって兄さん、準備とかスザクさんの怪我とかで忙しかったでしょ」
「だけど連絡くらい…」
「もう決めたんだ」
ロロがあまりにさっぱりした表情で言うので、ルルーシュはもう何もいえなかった。
満足に別れも言っていない。がんばれ、の一言さえも。

ルルーシュは、すっと顔をあげた。
「…俺は、つい最近まで普通に租界で弟と暮らしていた」
ざわめきがいっそう大きくなった。
「この場所が、俺は好きじゃなかった。だが租界でもこの学園にきてからも、ずっと自分を支えてくれた人がいた。どんなときも、そばにいて、守ってくれた」
そろそろ、ロロはエアポートだろう。誰にも見送りは頼んでいないと言っていた。これからはひとりでがんばるのだから、と。
やっぱり伝えなくては。お前はおれの大事な弟なのだと。
「そういう普通の、人の人とのつながりが、大切なのだと心底思う」
袖に控えているスザクの方をちらりと見ると、悪戯っぽい目で笑って頷いた。ルルーシュもにやりと笑い返す。
「人の上に立っていいのは、その覚悟があるやつだけだ」
だから、申し訳ありません。
言うなり、ぱっとルルーシュは駆け出した。
スザクが手を引いてくれるなら、どこまででも行けるだろうと思った。


***


「…それ、ロロに送るの?」
「うわ」
ルルーシュは、書き終わって誤字脱字をチェックしていたメールから目を離した。
式典での騒動は父帝に大笑いされて終わったが、側近たちにはこってり説教もされ、以降ルルーシュは大人しく学園で勉学に励みながら、王になるための資質、とやらを磨いている。
「びっくりするだろ、急に。…ていうか見るなよ、人のメールを」
「ごめん、ロロになんて書くのか気になって」
ぺろりと舌を出して、スザクは悪びれずに尚もメールを覗き込んだ。
「…そういうタイプだったか、おまえ?」
別に見られて困る内容でもないので、好きにさせておいたが、それは単純に疑問だった。
スザクはわりと放任というか、ルルーシュ自身には踏み込まないようにしている雰囲気があったのだが。
「それはルルーシュの騎士だからじゃないかな。今までは騎士たる者、感情は出すべきじゃないって思ってたんだけど」
「へえ、じゃあ宗旨替えしたのか」
「僕にとって、君は太陽のようだよ」
「……っそういうこと面と向かって言うなよ、恥ずかしい!」
「言いたくなったんだよ、ちゃんと言葉にして」
「…なんで」
「ルルーシュが僕以外を見てるのは辛いから。……目をそらさないで」
「なに……」



「内緒だよ。騎士とお姫様の恋は昔から厳禁だからね」

                                    ──おわり。

---
ダモクレスはナイトメアじゃないとかフレイアじゃみんな死ぬとか言ってはいけませんよ、これは笑うところですから。
シュナイゼルとカノンはもう少し書いても良かったんですが終わらないのでカットしました…。
あとロロも。ごめん。
「僕、あきらめてませんから。いまは負けてるかもしれませんけど」<これくらい言わせてあげたかったよロロ

ジノとかアーニャが協力してルルを逃がしてくれるの、楽しかったんですが。
「可愛いお嬢さん方、それより俺といいことしない?」「ジノ!」「いいから早く行け!」
「道、あけた」「モルドレッドはやりすぎだアーニャ!」
「セキュリティは解除したから」「ニーナ…ありがとう」「…早く行って」
「ランスロット使えるよ~!リミッター解除してるから3分で着くよ~」「ロイドさん!?」
みたいな。

…そんなこんなで最終話。
脳内麻薬の効果でもう最後には主役二人がスザルルにしかみえていなかったわけですが。

いやもう大変楽しいドラマでございました。
なんの気なしに変換してみたらこれですよ。毎回真面目に見ちゃったよ。
原作ファンにもドラマファンにも申し訳ない…。楽しかったです。
Commented by 3ki8 at 2009-03-19 17:52
堪能いたしました! 楽しかったね!!
もうほんとジノが大活躍で……(涙)。
スザルルに目覚めたよ、すばらしかったです!
Commented by 葵@管理人 at 2009-03-20 10:04 x
私も堪能しました!マジ楽しかったですね!!
というかここまでお付き合いありがとうございました(笑)
我々でもスザルルがいけることが分かったし、本当にありがたいドラマでしたよ…。
by generalx | 2009-03-18 23:11 | ギアス掌編 | Comments(2)