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るるたんの騎士(ナイト)#9

<前回のあらすじ>
学園に戻ったルルーシュに早速、父シャルルから呼び出しがかかる。
その場にはシュナイゼルもおり、シャルルは自分の跡を継ぐ者をシュナイゼルに決めたと告げる。さらに枢木スザクも連れて行け、との命令が下る。
ルルーシュは、ただ黙ってその命令を受け取ることしかできなかった──


***

ルルーシュが飛び出していったのを、クラスメートが何人か見ていたらしい。
血相を変え、探しに行こうという彼らを、スザクはとめた。
「いいのか」ジノが心配顔で言う。
確かにずいぶんと気落ちしているように見えた。無理もない。シュナイゼルが本国に呼び戻され、それはそのままシュナイゼルが次の王位につくことを意味する。そして、そこにはスザクも加わるという。
せっかく戻ってきたのに、ルルーシュはまた追い出されてしまうかもしれない。
「僕の意思は伝えてある。次は、ルルーシュの番だ」
スザクは静かに呟いた。


***

──今度こそ、見限られたかな。

ルルーシュはひとりでぼんやりと高台から町を見下ろしていた。
飛び出してきたはいいが、結局どこへもいけず、昔よく遊んだこの場所へきてしまった。
『お前だってもうすぐいなくなるんだろう!』
八つ当たりだと分かっていたから、いたたまれなくなって飛び出した。
結局のところ、と。ルルーシュは思う。
自分はどこまでも望まれていない存在だということなのだろう。だから、父はシュナイゼルを選んだ。
ならば、たとえばもう一度戦って、奪い取って、それでどうだというのだろう。物語ならばそれでハッピーエンドだろう。だがこれは現実だ。現実は何か変わるのか?
『あれには覚悟が足りないのだ。是が非でも戦って望むものを勝ち取るという、覚悟が』父のそんな言葉を、ルルーシュはまだ知らない。

さぞ情けないやつだと思われただろう。
スザクは最後まで諦めるなと言ってくれたのに、ルルーシュは逃げ出してしまった。

さく、と背後で雪を踏む足音がした。

本当に、いっそ見限ってくれたら諦めもつくのに。
自嘲めいた笑みを浮かべ、ルルーシュはため息をつく。
「…よく、ここが分かったな」
振り返らずに言うと、スザクが歩いてくる気配だけが近づいてきた。
「ルルーシュの騎士だからね」
答えになっているような、なっていないような返答をして、スザクは「ここは気持ちがいいね」とルルーシュに並んだ。
「…ルルーシュ。皇族の血を継いでいることは、君にとって苦しいだけかな」
スザクはやわらかく笑う。
ルルーシュは黙って、スザクの言葉を聴いていた。
「僕は、良かったと思ってるんだ。少なくとも、そのおかげでルルーシュと会うことができた。友人にもなれたし、騎士として仕えることも」
おかえり、と言ってくれたのはほんの数日前。あのときから、スザクは少し変わったように思う。
今のスザクは、まっすぐ、ルルーシュを見つめてくる。
「君が学園にくると決めた日のこと、覚えてる?」
覚えている。
こんなところにはいられないと一人逃げ出して、悲しくて寂しくて、途方にくれていたところにスザクが迎えに来た。
あのとき、ルルーシュはスザクに初めて命令をした。
(敬称を付けるな、敬語も使うな。俺とお前は共犯者なんだから)
「……」
「僕は、君だけの騎士だ。もう他の誰にも仕えない。それは忘れないで」
あとはルルーシュ自身が決めることだ、と。スザクは言う。
「…先に戻ってる」



本当に?
本当にいいのだろうか、望んでも。そのために再び傷つき、血を流せと彼に命じても。
皇位継承権も、特権も、そんなものは必要ない。
望みは本当はいつだってシンプルで、そして重大なもの。

「…っスザク!」
ルルーシュは、今さっきスザクが歩いていった道を走り出した。
たぶん、スザクはゆっくり歩いてくれていたのだろう。ルルーシュが後を追ってくることを、信じて。
スザクは立ち止まり、安堵したように笑みを浮かべた。
「俺は、戦う」
スザクは待っていてくれた、と思った。だから、俺は戦える。誰とだって、何とだって、戦える。
「戦うよ。望みをかなえるために」
「──じゃあ僕は、ルルーシュが戦うための剣に、ルルーシュを守るための盾になるよ」

ただ、そばに。それだけ。


---
そんなこんなで#9。
ロロ完璧に放置です。ごめん。
マリアンヌ様からの手紙はばっさりカット。あの方きっとそんなことしない。

※意味が分からない方は、こちらと、めいちゃんのしつじ公式サイトをご覧下さい。




***

「兄上…いえ、シュナイゼル殿下。あなたにデュエルを申し込みます」
「受けると思うのかい? 私には何のメリットもないのに」
庶民だった母が見初められたのは、ラウンズだったからだ。
母は守るべき主を夫とした。だが周囲からは相当疎まれたと聞く。それは幼少時の風当たりの強さからも想像がつく。
シュナイゼルの生母はマリアンヌを特に嫌っていて、面と向かって罵倒されたことこそないが、見下ろされたときの目の冷たさは良く覚えている。母の横死をきっかけに市井に退いたとき、ルルーシュは心から安堵したものだ。
シュナイゼルの目は、あの母親によく似ている。
「枢木スザクをかけての勝負でも、ですか?」
「……ふむ。私が勝ったら、今度こそ私に仕えると誓うかい、枢木スザク?」
「それが条件ならば、誓いましょう」
「ふふ、面白いね。ではカノン」
「はい。代理として、私がデュエルを務めます。──では、枢木卿」
「は──」

ぱん!

乾いた音に、はっとその方向を振り向いたルルーシュの目が、一瞬だけその姿を捉えた。その姿には不釣合いな銃を構えた、小柄なおさげ髪の少女。
(ニーナ…!)
目の前でスザクがゆっくりと倒れこんでいく。

とっさに伸ばしたルルーシュの手が、赤く染まる。

***
なぜ悩んだかって、スザクなら矢どころか銃弾すら避けるから。
怪我なんてしててもしなくても勝つよ。最終回なんだから。(身もふたもない)
by generalx | 2009-03-11 23:02 | ギアス掌編 | Comments(0)