人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Call x Call (手塚柴崎 From '図書館戦争')

別冊図書館戦争2 ネタバレです。



---
お互い名前で呼ぼう、というのは、付き合い始めて間もなく、どちらともなく出た話題だったと思う。
堂上夫妻も(勤務中を除き)いつの間にか名前で呼び合っていたし、今更名字で呼ぶのもおかしな話だ。

だからなのだろうか。
「光、光、ひーかーるー」
柴崎はさっきから手塚の名前を連呼している。最初はいちいち返事をしていた手塚だが、呼ばれているわけではないと分かってからは放置だ。しかし、なんだか自分の名前が安売りされているようである。
「…なにやってんだ」
「練習。咄嗟にあんたの名前が出てくるように」
「いや、そこまでしなくても慣れれば自然に出てくるもんだろ?」
「あたしは今すぐ慣れたいの」
「何で?」
軽く聞いたつもりだったのだが、柴崎はぴたっと動きを止めてしまった。どうしようかと思っていると、柴崎がようやく呟いた。
「…憧れだったんだもん」
「え?」
「大事なひとのこと、名前で呼ぶの憧れだったんだもん!」
ふいっと柴崎はそっぽを向いた。横顔でも、頬が紅潮しているのが分かる。
「…お前かわいいな」
素直に褒めたのに、うるさい、と悪態が返ってくる。照れているだけなのは分かるので、手塚はくくっと笑った。笑って、長い髪に手を伸ばす。
「自分が呼ばれるのは、どうでもいいのか?」
綺麗に手入れされた髪は、さららと指を流れていく。珍しくされるがままの柴崎は、しばらく黙った後、「よくない」と小さな声で俯いた。
だから、大事な大事な自分の思いが、伝わればいいと思いながら、大事に大事に呼んだ。

麻子は、とてもきれいに笑った。


---
「ほら、あんたも練習!さん、はい!」
「……っ」
「手塚ぁああ!」
いや、お前も呼べてないから。

もっと最初の頃はこんなんだったんじゃなかろうか。笑。
幸せになってよかったよ柴崎ー!
by generalx | 2008-08-19 20:50 | 言の葉 | Comments(0)