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happy summer(from 'R2' on pallarel)


※ルルの記憶がない状態でスザクが転入してくるパラレル
過去の一覧

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スザクがバスルームから出てくると、デスクの上に放ってあった携帯端末が明滅していた。不在ランプである。
緊急であれば、夜中だろうがなんだろうがお構いなく呼び出される立場だ。スザクは就寝を半ば諦めて、端末を操作した。
メールが1通。(ということは緊急の呼び出しではない、とスザクは思った。)
開いてみると、ルルーシュからだ。タイトルはなし、本文もたった一言。

『あつい』

「……?」
スザクは首を捻った。暑い? それはまあそうだろう、今は一番暑い時期なんだから。見れば、受信時刻はほんの5分ほど前である。深夜二時を過ぎていたが、スザクは少し迷った後、端末を操作して電話をかけた。
数回のコール音のあと、
『…はい』
ものすごく不機嫌そうな声が返ってきた。
「ルルーシュ? あの、どうかしたの?」
『…どうかって?』
寝ぼけてるのか?
「暑い、ってメールが来たんだけど」
『ああ…?』
ルルーシュは、まだぼやけた返答を返してくる。
『すまない。ちょっと…眠れなくてぼんやりしてた』
「眠れないって…え、暑くてってこと?空調は?」
『言ってなかったか、昨日から壊れてる』
なるほど、ようやく話が見えた。聞けば、直るのは早くても明日(もう今日か)になるそうだ。
「じゃあそれまで、まともに眠れないとか?」
『そうなるな』
参った、とルルーシュは呟いた。そういえば彼は暑さにも寒さにも弱かった、とスザクは思った。ついでに言えば寝起きも悪いし、一度寝たら簡単には起きないタイプ。
「ホテルにでも泊まればいいのに」
『…ロロが嫌がるから』
彼が普段行かない場所に監視システムは敷いていない。であれば不都合が生じる──ルルーシュの弟役である少年の思惑が見えた。
「うーん、そっか。あ、怪談でもしようか、涼しくなるように」
『……別の意味で眠れなくなるから遠慮しておく』
「相変わらず苦手なんだ」
『嬉しそうだな』
スザクはくすりと笑って、「だけど」と続けた。
「だけどこの暑さに寝不足じゃ、ほんとに倒れるよ?」
ただでさえ体力ないのに、と言う言葉はどうにか飲み込む。
『いざとなったら昼間、医務室に籠もるよ。…悪かったな、こんな時間に』
「いや、それはいいけど」
『おやすみ、スザク』
通話が終わりそうになった寸前、スザクはあっと声をあげた。
「ちょっと待って。思いついた、涼しくなる方法」
『…参考までに聞くが、なんだ?』
「プールがあるじゃない」
『………夜中だぞ』
「どうせ眠れないなら、起きてても同じじゃない?」
『お前、セキュリティという言葉を知っているか』
「この学校に限っては、君には無意味ってことは知ってる」
ルルーシュは小さくため息をついたようだった。
『わかった、お前も来るんだな?』
行くよ、とスザクは答えた。
夜のプールなんてちょっと楽しそうだ、とつい思ってしまう。
『じゃあ、いい』
待ってるよ、とルルーシュは言った。
『しかし、お前がそういうことを言い出すとは思わなかった。明日サボっても文句言うなよ?』
「はいはい」

猛暑も悪くないな、とルルーシュは呟いた。
たまになら、だけど。

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いや、暑いですねって。
by generalx | 2010-07-25 21:45 | ギアス掌編 | Comments(0)